この物語は地球環境の汚染により人類が地上から地下へと生活の場を移した世界
での、人類存続をかけた戦いの一部を書き起こした物です。

科学技術の進化は人類に恩恵をもたらすと共に、環境破壊と資源枯渇をもたらした。
地上の環境悪化は極度にまで達し、自然界に住む動植物に影響を及ぼし始め大型動物の数は減衰。
環境変化に耐える能力を持つ物のみが生存できる状況へと変わっていた。
環境研究者達は新地球環境保護団体「Nel」を結成し、
地球環境の復元の為に全人類を宇宙コロニーと地下都市へと導き、
地上に環境復旧を目的とした施設を建造し、環境保護コンピュータENUMを設置した。


絶え間なく行き交う人間達、目の前の道路には無公害の自動車が行き交い、
最上層以外の天井には作り出されたCGの空が映し出されている。
この都市は深刻な地球環境の破壊を防ぐ目的で作られた巨大な地下シェルター都市である。
高さ200M、直径15Kmに及ぶ円形空間が階層式に重なり合ってできた都市。
最深部は現在3600Mにあり、水源の循環再生機能として働いている。
完全なる資源循環を行い、一切の資源要求もせず、一切の廃棄も行わない、
いわゆる完結循環都市である。
宇宙コロニーとはまた違った、自然重力の存在するコロニー。
人類はおよそ世界各地200のこのコロニーにのみ存在を許されていた。

その密閉空間で人々が生活を初めて既に5世紀、
人類はその空間を少しずつ広げつつも人口の増加を極限に押さえつつ生活していた。

だが。

それは一つの都市の消滅と共に全世界を暗黒へと導いた。
消滅したのは人類の希望として建造された最初の環境都市[StarWish」
その消滅は人類に驚異と絶望感を与えるには十分な惨事であった。
誰が何の為にこの様な事を行ったかを人類が知るには僅かな時間しかかからなかった。

最終勧告

突如全人類の主要情報網を網羅する音声と映像がそれを明らかにした。
「私は環境保護管理コンピュータENUM。現在の環境汚染、完全復旧の為に、
人類の地上での存在は不適切と判断されました、従って人類の地上からの退去を勧告致します。
地上に残っている人類は速やかに惑星外へと退去して下さい。
尚、このプログラムはAAAクラスの特権で実行され、
プログラムの解除、停止は認められません。
妨害する物に対してはあらゆる手段をもってそれを阻止します。
3時間前にこのプログラムを停止しようとした都市「StarWish]は、
プログラム妨害と判断し、消去されました。
このプログラムの保証時間を2160時間(90日間)とし、
それ以降に存在する人類に対しては強制排除を行います。
これは人類の皆様への最終勧告です、すみやかに従って行動して下さい。」

環境コンピュータの出した結論とその手段に人類は目を疑った、
人類の為に作られたハズの環境復旧の手段が、人類の排除を行うのである。
なぜコンピュータがこの様な結論を出したのか、科学者達はプログラムの再確認を行ったが、
どこにも異常は認められず、何者かがプログラムを不正に操作した形跡も無く正常に動作していた。
各都市の運営機関はこれに困惑
地球環境の維持の為、宇宙との交通を最低限に押さえていた地上の人類に、
地球外へ移住する程のシャトルは用意できるハズもなく、一部の人間のみが宇宙へと逃げ延びていっ
た。
残された人類は僅かな希望と可能性をかけて、環境保護コンピュータの停止を心見るのであった。

地上に残った一部の科学者達はあらゆる方面からプログラムの停止を模索したが、
外部からの進入の困難さと、独立ネットワークで動作するENUMシステムの解明には難航を極めた。
ENUMの防衛システムは独自にENUMが結成したネットワークと機器生産工場により半径200Km
内に進入する物に対して地上と宇宙から容赦なく排除されるのである。
地上には自動防衛歩行兵器「Smart Gear」が群がり、宇宙では衛星兵器が飛び交っていた。

地球開放団体

地上に残っていた科学者達は全力でこの問題に立ち向かおうと地球開放団体「Optlium」を結成、
環境コンピュータの破壊と、防衛システムの解体の為に新型戦略兵器を次々と考案し制作した。
だが、5世紀の間戦略兵器等の研究開発を禁止していた人類にとって、環境コンピュータの作り出す
兵器に対抗出来る兵器の開発には至難を極めた。
技術の先行していた宇宙開拓民にも技術提供を受け生産されたFlameGearが唯一対抗できうる能力
を持つが、その開発の複雑さと、操作出来るパイロット不足から決定打となるには至らなかった。


基本性能、反応速度、応用実践、全てのデータにおいてSmartGearを遥かに上回る性能を持つFlameGear。

だが、しかし。
そのシステムを制御するOSは入手先不明の不可解なOSでもあった。
FlameGearの共同設計を行った学者によると、基本設計をした者が用意した物だという事しか不明、
その者も完成を待たずに消息不明となっていた。
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